改正労働基準法解説レポート

令和5年4月1日から、月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用となります。
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企画業務型裁量労働制の注意点

不同意者に不利益扱いをすることは許されない

企画業務型のみなし労働時間制では、対象労働者の同意が必要です。

同意は書面によることが望ましいでしょう。

本人の同意がない場合や、同意を撤回した場合は、この制度は適用できません。

同意しなかった労働者に対して解雇その他不利益(降格・昇給延伸・賞与のカット・配置転換など)取り扱いをしてはいけないということを労使委員会の決議事項で定める必要があります。

この不利益取扱いの禁止は、法律上の直接の要件ではなく、労使委員会の決議事項とされていますが、決議にあたっては委員の5分の4の同意が必要とされていますから、同意しない労働者に対する不利益取扱は、民事的に無効となると解されています(ただし、使用者が啓示的な制裁を受けることはありません)。

この同意は一度なされれば、不同意の申し出が行われるまで有効であって、有効期間ごとの更新の同意は必要でないと解されています。

また、決議事項に「期間同意」や「一部同意」が定められたときは、それによる取り扱いは可能です。

なお、新裁量労働制が当該職場に導入されたことによって、その職場にいた労働者の一部が裁量労働制の適用を拒否した場合に、当該拒否者のみを裁量労働制の適用がない職場へ配転することは認められると考えられています。

※明らかな左遷の場合は、「不利益取扱」とされます。

また、決議に定めた範囲以外の業務・労働者に本制度を適用しても、効果は発生しません。

ただし、幹部社員への登用基準として「企画業務型裁量労働」の経験を要件とし、この経験が足りないことを理由として幹部社員としての適正・能力を充足していないという判断に立つことは、会社の裁量の範囲内だといえます。


労働時間の自己管理が守られなければならない

数人でプロジェクトチームを組んで開発業務を行っている場合、そのチーフの管理下で業務遂行、時間配分を行っているときは裁量労働には該当しません。


みなし時間が8時間を超えれば、時間外割増が必要

みなし労働時間を定めるに当たり「8時間を超える」時間が定められたならば、その超えた部分については36協定の締結と割増賃金の支払が必要です。


深夜割増は適用される

また、企画業務型裁量労働制の対象労働者も、休憩、法定休日に関する規定や深夜業の割増賃金の規定は原則通り適用されます。

すなわち、法定休日や深夜に労働させた場合には、みなし労働時間に関わらず、実際に働いた時間分の割増賃金を支給する必要があります。

なお、このみなし労働時間制は、労働基準法で定められている年少者及び女性の労働時間に関する規定に係る労働時間の算定については適用されません。

休憩時間をきちんととらせる義務があることは変わりませんし、休日労働についても、割増賃金の支払いが必要です。

深夜・休日について生じた労働については、裁量労働対象者といえども、別途管理しなければなりません。


勤務状況の把握

裁量労働といえども、健康管理などの必要性から勤務状況の把握は必要です。


苦情の範囲

対象となる労働者の苦情の申出窓口および担当者、取り扱う苦情の範囲については、具体的に決議で定めることが決められています。

具体的には、企画業務型裁量労働制に関しては、業績評価制度や目標管理制度、これに基づく賃金制度などがあわせて導入されることが多いことから、評価制度、賃金制度に付随する苦情が多く寄せられることが予想されます。

これらに関する苦情についても、苦情処理の対象に含めるよう措置することが適当であると考えられます。

すでに企業内の苦情処理システムを持つ企業については、例えば、そのようなシステムで企画業務型裁量労働制に関する苦情処理をあわせて行うことを対象労働者に周知するように、実態に応じて機能するよう配慮することが求められます。


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