従業員代表の選出方法

選出の手続きも重要

事業所内での時間外労働に関する協定の締結(労働基準法36条)、あるいは就業規則を作成、変更する場合(労働基準法90条1項)などの場合、事業所に過半数の労働者で組織する労働組合がない場合は、当該事業所の「労働者の過半数を代表する者」が協定を結ぶ、あるいは就業規則の作成、変更に意見を述べる当事者になります。

その選出方法については、以下のの2つの要件を満たすものでなければ、適法な方法ではないとしています。(昭和63.1.1 基発第1号)

(1) その者が労働者の過半数を代表して労使協定を締結することの適否について判断する機会が、当該事業場の労働者に与えられている(使用者の指名などその意向に沿って選出するようなものではない)こと
(2) 当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続きがとられている(労働者の投票、挙手等の方法により選出される)こと

労働基準法施行規則第6条

・・・労働者の過半数を代表する者は、次の各号のいずれにも該当する者とする。

一 労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。

二 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。

(1998年労働省令45号全面改正、1999年労働省令51号一部改正。※省令は通達とは異なって、直接的に行政機関の外部に対する法効果を有する)

次のケースは、締結された36協定自体が、無効となります。

(1) 労働者を代表する者を使用者が一方的に指名している場合
(2) 親睦会の代表者が自動的に労働者代表となっている場合
(3) 一定の役職者が自動的に労働者代表となることとされている場合
(4) 一定の範囲の役職者が互選により労働者代表を選出している場合

したがって、上記の場合などは、適法な選出手続きとはいえません。

また、賛成反対が明確であることが必要で、「反対の人は、○月○日までに連絡するように・・・」というような意思表示の方法は、不適当と考えられます。

労働基準法は、労働者の過半数を代表する者は、次のいずれにも該当する者でなければならないと定めています。(労働基準法施行規則6条の2)

(1) 監督・管理の地位にある者でないこと。
(2) 労使協定の締結等を行う者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。

なお、投票、挙手等の「等」には、行政通達では「労働者の話し合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的手続が該当する」とされています。

トーコロ事件(上告)事件 最高裁 平成13.6.22

業務が原因で罹患した眼精疲労の治療のための通院を理由に、時間外労働命令を拒否した労働者に対する解雇が争われた事案。

時間外労働命令の前提となる36協定の効力が争点となったが、社長をはじめとする全社員が加入している親睦会の代表が労働者代表として締結した36協定は無効であり、これに基づく時間外労働命令も無効である以上、解雇も無効であると判断された。


過半数代表への不利益取扱いはできない

また、使用者は、労働者が過半数代表者であること、過半数代表者となろうとしたこと、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取り扱いをしないようにしなければなりません。

もちろん、過半数代表には、労使協定の締結を拒否したり、1年単位変形労働時間の労働日ことの労働時間について不同意を表明することができます。(平成11.1.29 基発45号)


分母となる「労働者」とは

従業員代表の選出権のある従業員とは、その協定が適用される事業場に働く従業員です。

「労働者の過半数を代表する者」の分母となる労働者について、法律は明確な規定をしていません(なお、同様に18条、24条、39条、90条にも労働者という表現が使われています)。

これに対し、行政解釈(昭和46.1.18 基収6206号、昭和63.3.14 基発150号、平成11.3.31 基発168号)では、次のように説明されています。

管理職手当等を受けている者は含まれるのか

この場合の「労働者」とは、労働基準法9条の定義によるのが妥当と考えられます。

すなわち、労基法9条=「業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」ということになります。管理職を含め、ほとんどすべての従業員が対象です。

よって、管理監督者は、過半数代表者には選出できませんが、全従業員の中には含みます。

仮に管理監督者を除いた従業員全員で過半数代表者を選出しても、選出された人物は過半数代表者とはなりませんので、併せて注意しておく必要があるでしょう。

肩書きが管理職であっても、労働時間管理の下に置かれる者は、選挙権を有すると解されています(ただし、上述のように被選挙権はありません)。

時間外労働を行うことは時間外労働とは無関係な労働者にも影響することがあります。

このことから、労働時間の規制のない管理監督の地位にある者や、時間外労働等が禁止されている年少者、時間外に制限がある育児・介護休業者、出張中の者、長欠者、休職者、出向者等、在籍するすべての者を「労働者の過半数」の算定に入れるべきだとされています。

病欠、出張、休職者は含まれるのか

事実上時間外労働・休日労働があり得ない者でも、除外する理由はありません。

パート、嘱託、時間外労働が規制されているため残業命令の対象にならない者も含めるか

行政解釈は「労働基準法第36条の協定は、当該事業場において、事業上に使用されている労働者の過半数の意思を問うためのものである。」(昭和46.1.18 基収第6206号)としており、こうした者も含まれると解されます。

したがって、正社員のみではなく、アルバイト、パート、嘱託社員、契約社員等を合わせた全従業員を基準として計算します。

出向受入者は含まれるが、派遣労働者は含まれない

一般には、実質的に指揮命令権を有し、労働時間に関する規定の履行義務を有すると認められる出向先において協定を締結することが必要である。

(昭和35.11.18 基収第4901の2号)

出向で他社に行っている従業員に対し、36協定が適用されないなら、その範囲からはずれますが、他社から出向を受け入れた労働者でも、この者が36協定の適用をうけるなら、代表選出にあたっての母数に含まれることになります。

なお、関連したものでは、派遣業法にもとづく派遣労働者や出張の場合の取扱いが問題となりますが、この場合、派遣労働者については派遣元 、出張の場合は所属事業場という違いがあります。


従業員代表を電子メールで選出していいか

電子メールで配信し、電子メールにより意思表示してもらうことについては、配信の記録、各労働者からの意思表示の記録が、労基署等から求められた際に、直ちに明らかにできる状態にあるならば、可能と思われます。


ページの先頭へ