改正労働基準法解説レポート

令和5年4月1日から、月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用となります。
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事業場外労働と事業場内労働が混在するとき

同じ拘束時間でも時間外に差が出る

みなし労働の対象となっている労働者が、その一部分を内勤業務にあてた場合、どうなるでしょうか。

〔A社のケース〕

  • 所定労働時間9時00分~18時00分
  • 休憩12時00分~13時00分
  • 営業社員のみなし労働時間 8時間00分

(1)外務業務に休憩時間を除き7時間00分従事した後、ちょうど所定終業時刻に帰社して2時間内勤業務をした。

このケースでは、時間外=3時間00分

ケース1

(2)外勤業務に休憩時間を除き5時間00分従事した後、所定終業時刻より2時間早く帰社し4時間00分内勤業務に従事した。

このケースでは、時間外=5時間00分

ケース2

(3)外勤業務に休憩時間を除き8時間00分従事した後、所定終業時刻より1時間遅れて帰社し1時間内勤業務に従事した。

このケースでは、時間外=2時間00分

ケース3

いずれも、終業時刻は同じ20時00分です。

ところが、「通常必要とされる時間」を8時間とみなした場合、早く帰社して労働時間算定可能な内勤業務に従事した方が時間外手当を稼げるのは、おかしいのではないかという疑問が生じます。

しかし、行政解釈は次のようになっています。

みなし労働時間制による労働時間の算定の対象となるのは、事業場外で業務に従事した部分であり、労使協定についても、この部分について協定する。

そして、労働時間の一部を事業場内で従事した日の労働時間は、みなし労働時間制によって算定される事業場外で業務に従事した時間と、別途把握した事業場内における時間とを加えた時間となる。

(昭和63.3.14 基発第150号)

この不均衡を修正するには、「通常必要とされる時間」を複数用意しておき、例えば4、5時間で終わってしまう外勤業務に通常必要な時間は「5時間」とする、ほぼ1日の所定労働時間に相当する8時間程度はかかる外勤業務については、「8時間」とする、というような決め方もできないわけではありません。

ただし、A社の例で、営業社員の業務がどのようなものであるかわかりませんが、(2)のように早々と帰社し、4時間もの内勤業務に従事する営業社員がいるとすれば、そもそも「営業社員」としての勤務として疑問があり、その内容をチェックすべきだともいえます。


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