改正労働基準法解説レポート

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出勤率の計算


年次有給休暇の付与要件となる出勤率の計算は、対象労働者の出勤日数をその労働者の所定労働日数で割って計算しますが、その計算に当たっては、次の通り取り扱うことになります。


所定労働日数

所定労働日数とは、対象労働者の所定休日を除いた日数になり、休日労働させた日は含まれません。

また、(1)使用者の責に帰すべき事由による休業の日、(2)正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供がまったくなされなかった日、については所定労働日には含めずに出勤率の計算を行うことになります。


出勤日数

出勤したと見なされる日数 ÷ 全労働日数 ≧ 8割

分子:出勤したとみなされる日数に入るか否か

事由 分子 分母
業務上災害・疾病による療養のため休業した期間 入る 入る
産前産後の休暇 入る 入る
育児休業期間 入る 入る
介護休業期間 入る 入る
年次有給休暇 入る 入る
使用者の責に帰す休業日 除外 除外
ストライキ等 除外 除外
休日労働日 除外 除外
休職期間中 除外 除外
不可抗力による休業 除外 除外
通勤災害による休業日 自由 自由
生理休暇日 自由 自由
会社休暇日 自由 自由

※「休職期間」と「生理休暇」については文献により、取り扱い方の違いがある。

※「看護休暇」については、欠勤とみなしても差し支えない。

遅刻ないし早退した日であっても、出勤している以上、年休算定上では「出勤日」とみなされます。

年次有給休暇としての休業日数は、本条一項・二項の規定の適用については出勤したものとみなす。

(昭和22.9.13次官通達17号)

全労働日の日数は、就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいうので、所定の休日に労働させた場合にも、その日は全労働日に含まれない。使用者の責めに帰すべき事由による休業の日、正当な争議行為により労務提供のなされなかった日は全労働日に含まれない。

(昭和33.2.13労働基準局長通達90号)(昭和63.3.14労働基準局長通達150号)

生理休暇は、行政解釈で「全労働日」に算入されると解されています(昭和23.7.31 基収2675号)が、学説では反対する意見もあります。

なお、当事者の合意があれば生理休暇を「出勤日」と扱うことは差し支えありません。

生理日の就業が著しく困難な女子が請求して就業しなかった日数は、出勤したものとはみなされないが、当事者の合意によって出勤したものとみなすことは差し支えない。

(昭和23.7.31 基収2675号)

休職期間については、以下の考え方から除外と解釈されています(異論もあります)。

休職発令された者が年次有給休暇を請求したときは、労働義務がない日について年次有給休暇を請求する余地がないことから、これらの休職者は、年次有給休暇の行使ができない。

(昭和31.2.13 基収489号)

このことから、病気欠勤中は欠勤と扱われるのですが、休職処分となった段階で、出勤日(分子)/全労働日(分母)の双方から除外されることになります。

これらの基準はあくまでも労働基準法39条の適用について定めたものであって、各企業における「精皆勤手当の支給」や「賞与の査定」とは関連していません。

ただし、国の行政指導の上では、労基法の趣旨からいって、年休取得の抑制につながるような取扱いは不適当とされています。(昭和53.6.22 基発355号)

慶弔休暇を取った日等については、就業規則等で、慶弔休暇等を就業義務を免除する日という趣旨で定める場合と、単に病気欠勤と同様に労働義務不履行の責任を問わない日という趣旨で定める場合があり、前者の場合に限り、「全労働日」に算入されないことと解されています。


「継続」勤務の意味

6ヶ月間の継続勤務か否かは、勤務の実態に即して実質的に判断されることになります。

定年退職者の嘱託としての再雇用は、単なる企業内における身分の切替えであって実質的には労働関係が継続していると認められるから、勤続年数を通算しなければならない 。

(昭和63.3.14 基発150号)

労働基準法第21条該当者(※日々雇用・2ヶ月以内の有期雇用・4ヶ月以内の季節業務・試用期間中の者)が引き続き使用されている場合、・・・継続勤務とみなされ、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数も通算する。

(昭和63.3.14 基発150号)

短期契約者の契約を更新して、事実上6ヶ月以上使用している場合は、契約更新は単なる形式にとどまり、実質的には労働関係が継続しているものと認められる場合が多いが、・・実態よりみて引続き使用されていると認められる場合は継続勤務に該当する。

(昭和63.3.14 基発第150号)

臨時工・パート等を正規職員に切り替えた場合、・・・継続勤務とみなされ、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数も通算する。

(昭和63.3.14 基発150号)

在籍出向の場合・・・継続勤務とみなされ、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数も通算する。

(昭和63.3.14 基発150号)

退職金を清算したうえで一たん全員解雇しその直後に一部労働者を再雇用し事業を再開しているような場合についても同様に、実質的に労働関係が継続しているものと認められ、勤務年数を通算しなければならない

(昭和63.3.14 基発第150号)

休職者の復職の場合、継続勤務とみなされ、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数も通算する。

(昭和63.3.14 基発第150号)

公共事業に従事している一般職の日日雇い入れられる非常勤職員について「会計年度末に退職し、約10日間の離職期間があって後次会計年度の当初に特別職として採用された」ケースについて「前後を通じて同一の公共事業に雇用されている限り、その職員の労働関係は実質的に継続しているものと認められる」

(昭和36.11.27 基収第511号)

国際協力事業団事件 東京地裁 平成9.12.1

1年単位の雇用契約を数年にわたって更新した場合は継続勤務にあたる。

日本中央競馬会事件 東京高裁 平成11.9.30

就業規則で、雇われている期間が仕事のある時だけに限定され、契約を結んでいない期間があるからといって、雇用契約が実態として同一性がないと考えるのは相当ではない。

ただし、継続性を否定する判例もあります。

東京芝浦食肉事業公社事件 東京地裁 平成2.9.25

常勤の正規職員が定年退職の後、翌日から非常勤嘱託職員として月18日間(週4日相当)の勤務となった場合、両者の勤務関係は実質的には別個であって勤務の継続はない。

過去1年間(採用当初は6ヶ月)の勤務実績が8割に満たなければ、その後の1年間有給休暇は与えられません。ただし、勤務継続期間を計算するにあたっては、8割未満の期間も算入されます。

本条2項の、「(当該労働者が全労働日の8割以上出勤した1年に限る。)」との規定は、加算要件を意味せず、従来通り、8割未満出勤の年も勤続年数に算入する。

(平成6.1.4 基発第1号)

 

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